高橋教授の総説「A novel concept of “Onco-Immuno-Endocrinology” lead to a discovery of new clinical entity “paraneoplastic autoimmune hypophysitis”」がBest Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolismに出版されました。
この総説は、今回高橋教授がBest Practice & Research Clinical Endocrinology & MetabolismでのInvited Editorとして企画した著書の一編となります。この企画には共同研究者の坂東弘教先生の「Paraneoplastic Autoimmune Hypophysitis: An Emerging Concept」、福岡秀規先生の「Immune checkpoint inhibitor-related hypophysitis」も含まれています。
この著作のきっかけは高橋教授が神戸大学での仲間と長年行ってきた研究成果である新規疾患概念「抗PIT-1下垂体炎(抗PIT-1抗体症候群)」の発見からさらに発展した「傍腫瘍自己免疫性下垂体炎」に至る過程に興味を持って頂いたAshley Grossman教授から企画にお誘い頂いたことでした。そして新たな学問体系であるOnco-Immuno-Endocrinologyの提唱を行なっています。詳細は下記の内容をご覧ください。
総説は 50日間無料のシェア用のリンクを下記に貼り付けますので、ご興味のある方はお気軽にご覧ください。
https://authors.elsevier.com/a/1f0fJ,YcMSW8rr
本総説に関連して夏に行われる内分泌代謝サマーセミナーで高橋教授が教育講演を担当します。下記に抄録をご紹介いたします。
https://jesss2022.sakura.ne.jp/
新たな疾患概念 傍腫瘍自己免疫性下垂体炎の樹立と
学問体系 Onco-Immuno-Endocrinologyの提唱
私たちは2003年に後天的特異的GH, PRL, TSH欠損症を呈した44歳の男性症例を経験した。その後、本例においてGH, PRL, TSH産生細胞に必須の転写因子PIT-1(POU1F1)に対する自己抗体が血中に存在しPIT-1に対する自己免疫によって発症することを明らかにし、3例を集積して「抗PIT-1抗体症候群」と名付けて新たな疾患概念として報告した1)。その後の解析により下垂体前葉細胞障害はPIT-1エピトープを認識する細胞傷害性T細胞(CTL)によること2)、さらにその免疫寛容破綻の原因はPIT-1を異所性に発現する胸腺腫である3)ことを明らかにして新たな胸腺腫関連自己免疫疾患であることを報告した。しかし、その後の症例の集積から胸腺腫だけではなく、異所性PIT-1発現をきたした他の悪性腫瘍によっても引き起こされる傍腫瘍症候群であること4)が明らかになり新たな傍腫瘍症候群として疾患概念を確立、診断基準を策定した5)。さらに疾患iPS細胞由来の下垂体を用いてPIT-1エピトープが提示されていること6)、患者末梢血からPIT-1特異的CTLをクローニングし、疾患iPS細胞由来の下垂体との共培養系による世界初のCTLによる自己免疫疾患のiPS細胞を用いた疾患モデルを樹立した7)。また同様の機序でACTH単独欠損症8)や免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎が引き起こされる9)ことを示して新たな疾患概念として「傍腫自己免疫性下垂体炎」を提唱した10)。これらの概念を包括的に理解するアプローチとしての横断的概念Onco-Immuno-Endocrinologyの重要性を示した11)。本教育講演では新たな概念、アプローチの提唱に至る旅のプロセスとそこから得られた教訓について共有したい。
1) Yamamoto M, Takahashi Y et al. J Clin Invest 121 113 2011
2) Bando H, Takahashi Y et al JCEM 2014 99 E1744
3) Bando H, Takahashi Y et al. Sci Rep 2017 7 43060
4) Kanie K, Takahashi Y et al. JES 2020 5 bvaa194
5) Yamamoto M, Takahashi Y et al. Endocri Rev 2020 41 1
6) Kanie K, Takahashi Y et al. JES 2019 3 1969
7) Kanie K, Takahashi Y et al. manuscript in preparation
8) Bando, Takahashi et al Pituitary 2018 21 480
9) Kanie, Takahashi et al Cancer Immunol Immunother 2021 70 3669
10) Bando, Kanie, Takahashi et al Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2021 Nov 25:101601.
11) Takahashi et al Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2022 e-pub
「Genespelist白熱教室!! 第1回 これってホントに副腎不全?」 が2月26日Web開催され、Genespelistの若い先生たちが多数参加、高橋教授の講演、質疑で大変白熱しました。
ACP (米国内科学会日本支部)主催、「Genespelist白熱教室!! 第1回 これってホントに副腎不全?」 が2月26日Web開催され、事前申し込み170名が満員になり当日も大盛況で大変白熱した議論が行われました。https://gcmegenespelist.peatix.com/?fbclid=IwAR1AWUcDPvo-Rwu_GISy16Hd2EcF2xlkdg1XBH_G6N11Y337rYv61iog8JY
副腎不全診断、治療のクリニカルパールについての高橋教授のレクチャーとともに、「副腎不全を疑った時にどのような時に負荷試験を考慮するのか」「負荷試験の際の注意点」「負荷試験の結果の解釈」「副腎クリーゼの病態と治療のアプローチ」「ステロイド離脱症候群の診断と治療の考え方」「相対的副腎不全の考え方と治療」などについて熱い議論が行われました。
ジェネラリストの先生方の副腎不全に対する関心の高さとともに、どんなことに悩んだり、困っておられるのかがよく伝わってきて私にとっても大変勉強になりました。副腎不全を始め全ての内科疾患は同様だと思いますが、表面的な検査項目の値などより、なぜそうなるのかという病態に対する深い理解とロジックな考え方が最も重要です。今回そのような病態と考え方をかなり議論できて大変有意義な時間でした。
当科FBでお知らせしているアンケートのように大変好評だったので、後日オンディマンドでも視聴できるということです。ジェネラリストだけではなく内分泌専門医にとっても参考になるのではないかと思います。有料ですが、それ以上の価値があると存じておりますのでご興味のある先生はお気軽にご視聴ください。
高橋教授のエッセイに「志を持った若い先生たちへ:メンターとロールモデルを持とう」を追加しました。
高橋教授のエッセイに「私たちはなぜ食べ過ぎてしまうのか」を公開しました。
2022年2月3日に奈良県医師会でWeb講演会を行う内容をご紹介します。
患者さんから教えてもらうこと(1) を教授のエッセイに追加しました。私たちは患者さんから多くのことを学びます。私自身も患者さんからたくさんのことを教えて頂き、自分の成長の糧にしてきました。このような経験は年数に比例すると思いますので、今後そのような患者さんの話を折に触れてご紹介したいと思いますので、私の経験、学びや教訓を共有することによって若い先生の参考にして頂ければと思います。
高橋教授がWilliams textbook of Endocrinology 15th Editionの分担執筆者になりました。
Williams textbookは世界の内分泌学の教科書かつバイブルであり、大学院時代からこれで勉強してきました。また私たちが報告してきたいくつかの新たな疾患概念も記載されその度に感無量の思いだったので、著者の一人として参加できることは最高の名誉です。この機会に内分泌学における日本のプレゼンスを示したいと思います。
これは長年のオリジナリティの高いCase-oriented research, Disease-oriented researchが国際的に評価された結果でもあります。ともに困難を乗り越えて歩んでくれたたくさんの仲間たちに心から感謝いたします。
そして今度は奈良から新たなブレークスルーを目指します。教科書に載るような仕事をしたい高い志を持った若者を絶賛募集中です。
詳細についてはFBもご覧ください。
高橋教授のチームでの長年の症例研究から築いた新たな疾患概念「傍腫瘍自己免疫性下垂体炎」の総説がBest Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolismに出版されました。これは今回の著者の坂東先生、蟹江先生をはじめ神戸大学の多くの先生たちの努力の賜物です。
Paraneoplastic autoimmune hypophysitis: An emerging concept
Hironori Bando, Keitaro Kanie, Yutaka Takahashi
Best Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolism 2022 e-pub ahead
私たちが発見し、機序を解明してきた抗PIT-1下垂体炎(抗PIT-1抗体症候群)、悪性腫瘍による傍腫瘍症候群としてのACTH単独欠損症、傍腫瘍症候群としての抗PD-1/PDL-1関連下垂体炎はいずれも合併した腫瘍における異所性抗原発現による免疫寛容破綻から下垂体炎を生じるという共通の病因があることが明らかになり、私たちは「傍腫瘍自己免疫性下垂体炎: Paraneoplastic autoimmune hypophysitis」と名付けました。この概念は現在原因不明の自己免疫疾患にも応用ができる可能性があります。
またこれらの概念、発症機序から新たな学問体系であるOnco-immune-endocrinologyを提唱しています。
https://authors.elsevier.com/a/1eCIy,YcMSSKtW
今回の論文の50日有効のリンクです。ご興味のある先生はご覧ください。
参考文献
高橋裕教授が共著者となった総説論文「Consensus on Diagnosis and Management of Cushing’s Disease: A Guideline Update」がLancet Diabetes Endocrinologyに出版されました。
世界のエキスパートが集まったワークショップでクッシング病の診断治療のガイドラインを策定しました。クッシング病は診断・治療に難渋することが多いですが、重要な点を網羅的しているだけではなく、大変わかりやすく実践的な総説になっています。
編集部より50日間フリーのリンクでFBやホームページでのシェアの許可もありましたので下記にリンクを記載します。ダウンロードも自由です。ご参考になりましたら幸いです。
https://authors.elsevier.com/c/1dxv67tNucfVDr
桒田博仁先生の論文” Association between dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and increased risk for bullous pemphigoid within 3 months from first use: A 5-year Population-Based Cohort Study Using the Japanese National Database”がJ Diabetes Investigにアクセプトになりました。
当科の桒田博仁先生、公衆衛生学講座の西岡祐一先生、今村知明教授らが中心に進めた研究で、レセプトビッグデータである1億5000万人のNational Data Baseを用いて、DPP4阻害剤を使用すると類天疱瘡のリスクが最初の3ヶ月間に有意に増加することを明らかにしました。DPP4阻害剤使用時の類天疱瘡は時に経験しますが、多くの場合高齢者でステロイドを使用することになり結構大変です。今回の結果は日常診療においても重要な情報だと思います。共同研究者の皆様に感謝申し上げます。
中島拓紀先生の論文” Adrenal insufficiency in immunochemotherapy for small cell lung cancer with ectopic ACTH syndrome”がEndocrinology, Diabetes and Metabolism Case Reportsにアクセプトになりました。
この症例は肺小細胞癌による異所性ACTH症候群に免疫チェックポイント阻害薬を使用したところ、劇的に腫瘍が縮小して副腎不全をきたしたというまれな経過を辿りました。異所性ACTH症候群は多くの場合、原発がんとともに高コルチゾール血症の治療に難渋しますが、がん免疫療法の進歩によってこのような症例も増えていくと考えられます。共同研究者の皆様に感謝申し上げます。
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