教授挨拶

奈良県立医科大学 糖尿病内分泌内科学講座のホームページにようこそ。早いもので私が教授を拝命して3年間が過ぎました。

 この3年の間に講座の仲間が増えました。本年度から専攻医4名が、そして大学院生も2名新たに参加して頂き、彼らのやる気に私自身も多くの刺激を頂いています。今年は、奈良医大出身の先生だけではなく関東や中部もから新しいメンバーに来て頂きました。糖尿病はもちろん内分泌代謝疾患についても、楽しく和気藹々と一流の専門医が目指せるとともに、世界最先端の診療、研究ができるという魅力はきちんと伝わっているようです。

 当科では元々糖尿病については経験豊富な先生が多かったのですが、内分泌疾患の紹介患者数も年々増加し、講座の全員が内分泌疾患について多くの経験を積んで随分たくましくなりました。さらに今年から日本専門医機構認定の連動研修可能な専門医として内分泌代謝糖尿病内科領域専門医制度が始まりました。私自身もガイドブック作成にその編集長として関わり、2023年5月に発売されました。この専門医制度の発足によって、今後本領域の若手の先生方そして指導する中堅の先生方は、糖尿病だけではなく内分泌代謝疾患も専門医として診療することになります。そしてそれは世の中のニーズでもあるということです。当科ではメンバー全員がそうなれるような診療体制、指導・教育体制をとっています。すなわち全員が糖尿病、内分泌代謝疾患に偏らずいずれの患者さんも診療します。そして経験の少ない先生やまだ自信のない先生には、私をはじめ指導医のリアルタイムかつ手厚い指導があるため、不安なく診療経験を増やしていくことが可能です。さらに学会発表、論文発表を通じてさらに深い知識と経験を積み重ねていきます。

 当科は診療体制としてチーム制をとっています。そのことによって屋根瓦式の指導体制になるだけではなく、働き方改革にも関連して有給休暇も取りやすくなっています。そして人数が増えて層も手厚くなったので、今年度からは3チーム体制にしてポリクリ学生も参加した活発なディスカッションが行われています。

 実際当科の指導は非常に手厚くなっています。日本の大学病院でもまれだと思いますが、毎朝8:30から外来新患カンファレンスを私自身も参加して全員で行なっています。そこでは外来、入院のすべての新患患者をディスカッションし、必要な検査、治療方針だけではなく、診断のヒント、紹介状の行間から何を読み取るのかを全員で勉強します。特にまだ外来経験がないあるいは少ない若い先生にとってはベテランの外来の疑似体験ができるとともに、1年で膨大な症例の経験に結びつけることができます。また経験のある先生も一人では判断が難しいケースでも安心して診療ができます。

 実際、当番の先生たちはしっかり予習することで自分で考え文献を調べ、診療の前に直ちにフィードバックを受けることで、月ごとに成長していることがわかります。また内科医として一人前になるためにはきちんとしたプレゼンとともにしっかりとしたサマリーを作成できることが重要です。当科では専門医取得に必要なサマリーの指導体制も整っています。そして学会発表、論文作成を通じて真の実力を養っていきます。昨年の先行医の先生たちも1年間で見違えるように逞しくなり関連病院で活躍しています。

 また内分泌疾患には甲状腺疾患や骨粗しょう症などコモンディジーズもたくさんありますが、専門医でもなかなか遭遇できないようなケースもあります。そんな症例も皆で共有して学べることは非常に貴重な機会になっています。このカンファレンスは大変ですが、若い先生が成長するためには素晴らしいシステムであることを実感しており、私自身は今後も続けていきたいと思っています。

 また月曜日における症例カンファレンスではそれぞれのチームがピックアップした症例について病態についての深い洞察に基づいたディスカッションを行うとともに、内容だけではなくプレゼンや質疑も磨くことができます。皆さん以前と比較して見違えるようなプレゼンになってきました。そこでは4週ポリクリの学生さんにもチャレンジして頂いており見事なプレゼンをされる方もいます。

 もう一つの特徴は月曜日夜のWeb勉強会です。もともとは女性医師の多い当科では産休、育休中でも学びを続けることができるように、また家庭があって早く帰らなければいけない医師も自宅から参加できるよう20:00-21:00でWebで行なっています。それぞれ症例検討や文献紹介を行い、十分な時間を割いて白熱したディスカッションが行われます。講義を聞いて内分泌代謝学に興味を持った学生さんもたくさん参加して鋭い質問をしてくれています。Webの良い点は距離は関係ないので、関連病院の先生方、またご希望の先生方にも広く参加して頂いています。

 火曜、金曜夕方には研究カンファレンスを行なっています。研究に従事していない先生、学生さんも自由に参加できます。私たちの現在のプロジェクトとして、主に内分泌代謝疾患を対象にしたレセプトビッグデータ研究を中心に公衆衛生学講座との共同で行っていますが、基本的には症例やクリニカルクエスチョンを大切に深く掘り下げて病態を解明するための臨床、基礎研究など様々なスタイルの研究を行なっています。指導方針として、診療における本人の素朴なクリニカルクエスチョンと興味を大切にしています。研究は順調に進めばこれほど楽しい作業はありませんが、うまくいかないこともあります。そのような時に自らが解決したいクリニカルクエスチョンに取り組んでいることは、前向きに継続できるエネルギーを与えてくれます。そして私が赴任して3年目になり、しっかりとした論文が出るようになってきました。現在も糖尿病、内分泌代謝疾患についてビッグデータ解析やケースレポートの論文を次々と投稿中です。

 また、大学病院なので診断・治療に難渋する症例によく遭遇しますが、まず世界のアップデートを十分勉強し、さらに重要なクリニカルクエスチョンを立案し問題を解決するために研究に取り組みます。目の前に実際患者さんがおられて、その問題を解決するための研究なので、皆非常にやりがいを感じながら、大学院生だけではなく、スタッフ、医員、そして学生さんも非常にホットかつ面白い教科書やガイドラインを書き換えるような研究テーマに取り組んでいます。具体的なテーマ等は研究のご紹介をご覧下さい。

 そして日本糖尿病学会、日本内分泌学会等、関連学会には皆積極的に発表しています。学会発表は本番だけではなく、その準備のプロセスでの勉強が最も大切です。発表内容に加えてプレゼンの仕方を含めて何度も予演会を繰り返しながら、懇切丁寧に指導することによりメンバーが発表のたびに成長しているのを実感しています。そして発表後は必ず論文化を目指します。また学生さんも希望すれば学会発表を指導しています。一昨年は第47回神経内分泌学会学術集会で医学科4年生の馬井君が臨床神経内分泌優秀賞を、昨年は当講座が主催した第23回近畿支部内分泌学術集会で専攻医の河邉先生が優秀演題賞を受賞、医学科5年生の竹下さんが奈良県立医科大学海外リサーチクラークシップ研究成果報告会で最優秀演題賞を受賞しました。そして今年は日本糖尿病学会学術集会で紙谷診療助教がYIAを受賞しました。今後は広い視野を持つためにも海外の学会にも積極的に発表を目指します。

 当科ではまず内科医として一人前になって総合内科専門医を取得して頂くための研修カリキュラムを用意しています。さらに私たちの分野では糖尿病だけではなく多くの内分泌代謝疾患もプロフェッショナルに診療できることが必須になります。当科では上記のように糖尿病だけではなく内分泌代謝疾患のエキスパートになるための全国でも有数の手厚い指導体制を構築しています。さらに色々なキャリアパスを目指す学生・先生方のお手本になるメンター、ロールモデルが存在します。そして関連病院の人事等もできるだけ本人の希望や家庭の事情も配慮しながら長期的視点でサポートしております。長期のキャリアパスとしての講座への参加だけではなく、枠があれば1-2年の短期間の研修や国内留学も歓迎します。

 当科の医局はアットホームな雰囲気で、子育て中の女性医師も多く活躍しており、何よりも和気藹々と楽しく学ぶことをモットーにしております。せっかく仕事をするのであれば、コルチゾールやアドレナリンではなく、オキシトシンやセロトニンが分泌されるような環境で楽しくやりがいを持って取り組みませんか?糖尿病、内分泌代謝学に志を持った若い先生方を心から歓迎いたしますので、どうぞお気軽にご連絡ください(dm840 〈at〉 naramed-u.ac.jp)。

奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学

教授 高橋 裕

高橋教授のエッセイ

教授挨拶 2022

教授挨拶 2021

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