NEWS一覧

2024.04.03

榑松先生の論文「Adrenal crisis associated with COVID-19 vaccination in patients with adrenal insufficiency: A literature review」がEndocrine Society副腎部門の論文2024 (Endocrine Society Thematic Issue on Adrenal Disease 2024)に選ばれました。おめでとうございます。

本論文では副腎不全の患者さんにコロナワクチンを投与した場合に、発熱や食思不振を呈した場合には副腎クリーゼのリスクがあることを報告したものです。基本的にはワクチン接種後に発熱や食思不振を呈した場合には3倍以上のヒドロコーチゾンの服用を推奨しています。またアデノウイルスベクターの場合には1回目から、mRNAワクチンの場合には2回目にリスクがあります。COVID-19は収束しつつありますが、今後もワクチン接種は継続される状況において、念頭に置いておく必要があると思います。副腎不全の患者さんを診療されている先生方にご参考になりましたら幸いです。

また副腎不全でヒドロコーチゾン治療中の患者さんは、コロナワクチン投与後の体調不良の場合にはまずヒドロコーチゾンを3倍に増やすとともにすぐにかかりつけの病院に相談することが大切です。

https://academic.oup.com/endocrinesociety/pages/adrenal-disease-2024

2024.03.25

高橋教授が第15回台湾内分泌糖尿病学会に招かれ「New form of hypophysitis: A journey for the discovery of novel disease」のタイトルでPlenary lectureを行いました。新たな疾患「抗PIT-1下垂体炎」を発見し20年以上かけて症例を集積、診断基準の策定、さらに新規疾患概念「傍腫瘍自己免疫性下垂体炎」および学問体系Onco-immuno-endocrinologyの提唱に至るストーリーとそこから得られた教訓を紹介し、多くの先生方に楽しんで頂きました。学会の様子の写真とともにご参考に教訓のスライドを掲載します(詳細は当科FBをご覧ください)。

台湾の方たちは本当に親日的で大変なおもてなしを頂き、台湾内分泌学会PresidentのFeng-Hsuan Liu教授、参加されていた韓国内分泌学会PresidentYoon-Sok Chung教授、米国のAnand Vaidya 教授たちとの交流も楽しむことができました。今回招聘頂いたFeng-Hsuan Liu教授並びにスタッフの先生たちも至れり尽くせりのお気遣いを頂き心から感謝申し上げます。

2024.03.25

奈良県立医科大学 糖尿病内分泌内科のメンバーの岡田先生、紙谷先生、中島先生、玉城先生の4人が日本専門医機構認定の内分泌代謝糖尿病内科専門医試験に合格しました。彼らもこの3年間で見違えるように腕を上げて、糖尿病だけではなく内分泌代謝疾患もエキスパートとして診療できるようになりました。

奈良県は全国でも糖尿病、内分泌代謝専門医の数が少ないのですが、当科では、奈良県全体で、糖尿病、内分泌代謝疾患診療に従事できる専門医を増やしていくとともに、診療レベルをさらに向上できるよう引き続き尽力して参ります。

2024.01.23

糖尿病、内分泌疾患診療のエキスパートになりたいけれど、指導を受ける機会がない先生もおられるかもしれません。

本ホームページの高橋教授のエッセイの欄にを糖尿病、内分泌疾患診療のエキスパートになるために大切なことを連載していきます。
ご活用頂けましたら幸いです。

2024.01.09

医学部6年生の竹下沙希さんと西岡祐一先生の論文「Novel subgroups of obesity and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis」がBMC Public Healthに出版されました。
https://link.springer.com/article/10.1186/s12889-024-17648-1?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20240109&utm_content=10.1186/s12889-024-17648-1

先日のお知らせでもお伝えしましたが、竹下さんは学生としてもともと基礎の研究室でシングルセル解析などの基礎実験に従事していましたが、その後公衆衛生学教室で研究を続け今回糖尿病内分泌内科のプロジェクトとして、レセプトビッグデータを用いた解析を行い見事に論文まで到達しました。6年生で通常の勉強だけではなく、模擬国連やこのような研究に従事し大きな達成を果たしたことは素晴らしいと思います。

本論文では、レセプトビッグデータを用いて9494名のBMI 35以上の高度肥満を対象とした新たな臨床的分類に挑戦しました。

背景として、高度肥満の患者さんが糖尿病、高血圧、脂質異常症など多くの合併症で困っているケースにはよく遭遇します。一方で高度肥満にも関わらずほとんど合併症のない方や、合併症も様々であることもよく見かけます。今回その不均一性を明らかにするために、レセプトにおける病名、投薬内容、診療コードを用いてバイアスのないクラスター解析を行い、各クラスターの臨床的特徴とその腎予後及び生命予後を明らかにしました。

興味深いことに、高度肥満の症例は独立した7つのクラスターに分類されました。糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管合併症を起こしやすいクラスターやほとんど合併症のないクラスター(いわゆるMetabolically Healthy Obesity(MHO)のグループさらにアレルギーや呼吸器疾患が多いクラスターなどに分かれました。アレルギーや呼吸器疾患が多いクラスターでは代謝異常や心血管合併症が少なく、同じ高度肥満でも背景となる病態が明らかに異なることが示唆されました。

また生命予後については、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管合併症を起こしやすいクラスターは確かに悪かったのですが、驚いたことに生命予後が最も悪いクラスターは高度肥満診断後、医療機関を受診していないクラスターでした。このことは高度肥満を指摘した後に医療機関で精査を行い適切に介入を行うことの重要性を示唆しています。

また心血管合併症を起こしやすいクラスターについては十分な薬物療法がなされていましたがそれでも予後が悪く、今後は代謝改善手術をより積極的に考慮する必要がある可能性を示唆しています。

今回同じ高度肥満においてもそれぞれの臨床的特徴と予後を明確にしたことから、その基盤となる病態の解明やより適切な介入方法などを検討するための重要な情報になると考えています。共同研究者である講座のメンバー、今村教授をはじめとする公衆衛生学教室のメンバーの皆様に改めて感謝申し上げます。

このような解析はまさにビッグデータでしかできないことで、今後の新しい可能性を感じながら講座のメンバーと共に他の疾患にも応用を試みています。

論文は上記のURLで公開されていますので、興味のある先生は是非ご覧ください。

2024.01.04

奈良県立医科大学6年生の竹下沙希さんの論文“Novel subgroups of obesity and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis”BMC Public Healthにアクセプトになりました。

竹下さんは医学部学生で基礎医学教室で研究をしていましたが、その後公衆衛生学教室のビッグデータ解析を始め、4年生の頃より高橋教授と西岡先生の指導のもと糖尿病内分泌内科学のテーマに取り組みました。統計解析と英語に抜群のセンスがあり、もともとシングルセル解析で用いられる統計手法を、臨床のビッグデータ解析に応用して新たな視点を切り拓きました。

また出版されたら詳細をお知らせいたしますが、BMI35以上の日本人の高度肥満患者を特定健診およびレセプトデータをもとにクラスター解析を行い、さらに各クラスターの腎予後、生命予後まで明らかにしました。この手法は新規であるためレフリー、エディターからも何度も厳しいリバイスを要求されましたが、卒試、国試の勉強をしながら見事に乗り切りました。

私が奈良医大に来てから何人かの学生が学会発表、研究にチャレンジしてくれました。その中で在学中に論文のアクセプトにこぎつけたのは竹下さんが初めてで、素晴らしい達成を成し遂げたと思います。奈良医大の学生さんは皆さん素晴らしいポテンシャルを持っているので、このようなチャレンジをしてみたい学生さんを心からお待ちしています。

竹下さんはニューヨークの予備国連でもファシリテーターを担当し奈良医大チームとして受賞したり既に国際的に活躍しています。医師になっても高い目標と広い視野を持ってさらに発展してくれることを心から願っています。

2023.12.27

高橋教授の長年の研究テーマである抗PIT-1下垂体炎について新たな病態を報告する論文が出版されました。

これは神戸大学の大学院生である浦井伸先生が長年の努力を実らせてEur J Endocrinologyに出版されたものです。抗PIT-1下垂体炎、傍腫瘍自己免疫性下垂体炎の疾患概念の確立とともに新たな病態を報告することができました。本当におめでとうございます。

https://doi.org/10.1093/ejendo/lvad179

この論文ではこれまで診断された9例の抗PIT-1下垂体炎の臨床的特徴、抗体価、疾患感受性HLA、さらに異所性PIT-1発現の病態について詳細な検討を行いました。

その結果

  • 全ての症例でGH, PRL, TSHの極めて低値を認めること
  • 下垂体は軽度の萎縮あるいは正常
  • 4例が胸腺腫、5例はその他のさまざまな悪性腫瘍による
  • いずれも腫瘍にPIT-1が異所性に発現しているが、タンパクの存在様式が胸腺腫、悪性リンパ腫とその他の一般の腫瘍が異なること
  • HLA-A*24:02 、A*02:06 が疾患感受性のHLAであること
  • 1例では免疫チェックポイント阻害薬投与後に発症しており、いわゆる免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎としても発症しうること
  • このことは免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎ではほとんどで中枢性副腎機能低下症を呈しますが、それを認めず中枢性甲状腺機能低下症を呈した場合には本疾患を疑ってGH, PRLの測定が必要であることを意味します。

高橋教授が神戸大学の仲間、そして多くの共同研究者と共に抗PIT-1下垂体炎をという新たな疾患を発見し、さらに一部の免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎、ACTH単独欠損症も同様の機序で発症する傍腫瘍症自己免疫性下垂体炎という新規疾患概念に結びついた一連の研究の要素が今回の論文には詰まっています。

浦井先生の研究を支え続けた井口先生をはじめ神戸大学のメンバー、今回の共同研究者である飯田先生含め関係の先生方に心から御礼を申し上げます。そして私たちはこのような難病に苦しむ患者さんを救うためにこの新たな病気について、さまざまなアプローチを用いてさらに研究を発展していきたいと思います。

2023.11.10

紙谷史夏先生の論文 Antithyroid drug-induced leukopenia and G-CSF administration: a long-term cohort study”がSci Repに出版されました。

この論文はレセプトビッグデータを用いて、抗甲状腺薬を投与されたバセドウ病の患者さん12491人を最長6年間の観察期間で白血球減少及びG-CSF投与のリスクを明らかにしたものです。これまでの多くの報告は専門病院単施設における比較的短期間のデータが主だったのですが、今回初めてリアルワールドにおける長期的リスクも含めて明らかにしました。

これまでの報告では最初の3ヶ月が白血球減少のリスクが高いというものだったのですが、今回の解析でカプランマイヤー解析を行うと72日までとそれ以降で明らかにリスクが変わることを示しました。白血球減少、G-CSF投与が必要になるリスクは72日まではそれぞれ千人年あたり37.2(患者割合では0.7%)8.0(0.2%)と比較的高頻度に起こりますが、それを過ぎると約10分の1に低下しそれぞれ千人年あたり3.10.7に減少し少なくとも6年は持続することが明らかになりました。また長期中断後の再投与においても同様のリスクであること、MMI, PTUいずれも15mg150mgを越えるとリスクが増えることを示しました。

これらの結果は白血球減少の副作用への要注意期間は開始後72日間で良いこと、その後リスクは大きく減るが持続すること、中断期間があり再投与した場合には最初は同様の注意が必要なことを明確に示しており、今後ガイドライン等に反映されることが期待されます。

査読に時間がかかった上に4人のレビューワーから多くの指摘を頂き苦労しましたが、臨床的に大きな意義のある論文になりました。粘り強く対応した紙谷先生、西岡先生、おめでとうございます。

Sci Repはオープンジャーナルですのでご興味のある先生はどうぞご覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37935745/

2023.10.31

紙谷先生、西岡先生の論文”Antithyroid Drug-induced Leukopenia and G-CSF Administration: A Long-term Cohort Study”がScientific Reports誌にアクセプトになりました。

バセドウ病の多くは抗甲状腺薬で治療しますが、稀であるが深刻な副作用である無顆粒球症についての特に長期的なエビデンスは十分ではありません。本論文は、レセプトビッグデータを用いて抗甲状腺薬による無顆粒球症の発症頻度の長期リスクについて検討したものです。これまでの多くのデータは単施設の専門病院からの報告がほとんどであり観察期間も限られていたのですが、今回14751名の抗甲状腺薬を投与されたバセドウ病患者を平均観察期間757日間フォローしたという大規模かつバイアスの少ないコホート研究により、リアルワールドにおける無顆粒球症、G-CSF投与の長期的リスクを明らかにしました。

また出版されたら詳細をお知らせしますが、MMI, PTUいずれも短期的リスクと長期的リスクが異なることを今回初めて明確にしました。4名のレフリーとのやりとりもありかなり時間がかかり苦労しましたが、今後ガイドライン等にも影響しうる論文になると自負しています。紙谷先生、西岡先生おめでとうございます。

今後もビッグデータ解析に基づく内分泌疾患、糖尿病についての面白い論文が続きます。他のプロジェクトも頑張って行きましょう。

2023.10.20

玉城先生の症例報告「Efficacious Primary Pasireotide Therapy in a Case of a Large Invasive Adenocorticotropin-secreting Pituitary Tumor」がJCEM Case Reports.にアクセプトになりました。おめでとうございます。

これはKnosp grade 4の浸潤性ACTHomaに対して術前投与したパシレオチドが著効し、結果的には手術が不要になってPrimary Medical Therapyとして有用であった症例を報告したものです。

クッシング病は手術で全摘できない場合、その後の薬物療法でも難渋することが少なくありません。このように全例で著効するとは限りませんが、術前投与、Primary Medical Therapyとしてのパシレオチドの使い方に対する重要な示唆になると思います。

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