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2024.01.04

奈良県立医科大学6年生の竹下沙希さんの論文“Novel subgroups of obesity and their association with outcomes: a data-driven cluster analysis”BMC Public Healthにアクセプトになりました。

竹下さんは医学部学生で基礎医学教室で研究をしていましたが、その後公衆衛生学教室のビッグデータ解析を始め、4年生の頃より高橋教授と西岡先生の指導のもと糖尿病内分泌内科学のテーマに取り組みました。統計解析と英語に抜群のセンスがあり、もともとシングルセル解析で用いられる統計手法を、臨床のビッグデータ解析に応用して新たな視点を切り拓きました。

また出版されたら詳細をお知らせいたしますが、BMI35以上の日本人の高度肥満患者を特定健診およびレセプトデータをもとにクラスター解析を行い、さらに各クラスターの腎予後、生命予後まで明らかにしました。この手法は新規であるためレフリー、エディターからも何度も厳しいリバイスを要求されましたが、卒試、国試の勉強をしながら見事に乗り切りました。

私が奈良医大に来てから何人かの学生が学会発表、研究にチャレンジしてくれました。その中で在学中に論文のアクセプトにこぎつけたのは竹下さんが初めてで、素晴らしい達成を成し遂げたと思います。奈良医大の学生さんは皆さん素晴らしいポテンシャルを持っているので、このようなチャレンジをしてみたい学生さんを心からお待ちしています。

竹下さんはニューヨークの予備国連でもファシリテーターを担当し奈良医大チームとして受賞したり既に国際的に活躍しています。医師になっても高い目標と広い視野を持ってさらに発展してくれることを心から願っています。

2023.12.27

高橋教授の長年の研究テーマである抗PIT-1下垂体炎について新たな病態を報告する論文が出版されました。

これは神戸大学の大学院生である浦井伸先生が長年の努力を実らせてEur J Endocrinologyに出版されたものです。抗PIT-1下垂体炎、傍腫瘍自己免疫性下垂体炎の疾患概念の確立とともに新たな病態を報告することができました。本当におめでとうございます。

https://doi.org/10.1093/ejendo/lvad179

この論文ではこれまで診断された9例の抗PIT-1下垂体炎の臨床的特徴、抗体価、疾患感受性HLA、さらに異所性PIT-1発現の病態について詳細な検討を行いました。

その結果

  • 全ての症例でGH, PRL, TSHの極めて低値を認めること
  • 下垂体は軽度の萎縮あるいは正常
  • 4例が胸腺腫、5例はその他のさまざまな悪性腫瘍による
  • いずれも腫瘍にPIT-1が異所性に発現しているが、タンパクの存在様式が胸腺腫、悪性リンパ腫とその他の一般の腫瘍が異なること
  • HLA-A*24:02 、A*02:06 が疾患感受性のHLAであること
  • 1例では免疫チェックポイント阻害薬投与後に発症しており、いわゆる免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎としても発症しうること
  • このことは免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎ではほとんどで中枢性副腎機能低下症を呈しますが、それを認めず中枢性甲状腺機能低下症を呈した場合には本疾患を疑ってGH, PRLの測定が必要であることを意味します。

高橋教授が神戸大学の仲間、そして多くの共同研究者と共に抗PIT-1下垂体炎をという新たな疾患を発見し、さらに一部の免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎、ACTH単独欠損症も同様の機序で発症する傍腫瘍症自己免疫性下垂体炎という新規疾患概念に結びついた一連の研究の要素が今回の論文には詰まっています。

浦井先生の研究を支え続けた井口先生をはじめ神戸大学のメンバー、今回の共同研究者である飯田先生含め関係の先生方に心から御礼を申し上げます。そして私たちはこのような難病に苦しむ患者さんを救うためにこの新たな病気について、さまざまなアプローチを用いてさらに研究を発展していきたいと思います。

2023.11.10

紙谷史夏先生の論文 Antithyroid drug-induced leukopenia and G-CSF administration: a long-term cohort study”がSci Repに出版されました。

この論文はレセプトビッグデータを用いて、抗甲状腺薬を投与されたバセドウ病の患者さん12491人を最長6年間の観察期間で白血球減少及びG-CSF投与のリスクを明らかにしたものです。これまでの多くの報告は専門病院単施設における比較的短期間のデータが主だったのですが、今回初めてリアルワールドにおける長期的リスクも含めて明らかにしました。

これまでの報告では最初の3ヶ月が白血球減少のリスクが高いというものだったのですが、今回の解析でカプランマイヤー解析を行うと72日までとそれ以降で明らかにリスクが変わることを示しました。白血球減少、G-CSF投与が必要になるリスクは72日まではそれぞれ千人年あたり37.2(患者割合では0.7%)8.0(0.2%)と比較的高頻度に起こりますが、それを過ぎると約10分の1に低下しそれぞれ千人年あたり3.10.7に減少し少なくとも6年は持続することが明らかになりました。また長期中断後の再投与においても同様のリスクであること、MMI, PTUいずれも15mg150mgを越えるとリスクが増えることを示しました。

これらの結果は白血球減少の副作用への要注意期間は開始後72日間で良いこと、その後リスクは大きく減るが持続すること、中断期間があり再投与した場合には最初は同様の注意が必要なことを明確に示しており、今後ガイドライン等に反映されることが期待されます。

査読に時間がかかった上に4人のレビューワーから多くの指摘を頂き苦労しましたが、臨床的に大きな意義のある論文になりました。粘り強く対応した紙谷先生、西岡先生、おめでとうございます。

Sci Repはオープンジャーナルですのでご興味のある先生はどうぞご覧ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37935745/

2023.10.31

紙谷先生、西岡先生の論文”Antithyroid Drug-induced Leukopenia and G-CSF Administration: A Long-term Cohort Study”がScientific Reports誌にアクセプトになりました。

バセドウ病の多くは抗甲状腺薬で治療しますが、稀であるが深刻な副作用である無顆粒球症についての特に長期的なエビデンスは十分ではありません。本論文は、レセプトビッグデータを用いて抗甲状腺薬による無顆粒球症の発症頻度の長期リスクについて検討したものです。これまでの多くのデータは単施設の専門病院からの報告がほとんどであり観察期間も限られていたのですが、今回14751名の抗甲状腺薬を投与されたバセドウ病患者を平均観察期間757日間フォローしたという大規模かつバイアスの少ないコホート研究により、リアルワールドにおける無顆粒球症、G-CSF投与の長期的リスクを明らかにしました。

また出版されたら詳細をお知らせしますが、MMI, PTUいずれも短期的リスクと長期的リスクが異なることを今回初めて明確にしました。4名のレフリーとのやりとりもありかなり時間がかかり苦労しましたが、今後ガイドライン等にも影響しうる論文になると自負しています。紙谷先生、西岡先生おめでとうございます。

今後もビッグデータ解析に基づく内分泌疾患、糖尿病についての面白い論文が続きます。他のプロジェクトも頑張って行きましょう。

2023.10.20

玉城先生の症例報告「Efficacious Primary Pasireotide Therapy in a Case of a Large Invasive Adenocorticotropin-secreting Pituitary Tumor」がJCEM Case Reports.にアクセプトになりました。おめでとうございます。

これはKnosp grade 4の浸潤性ACTHomaに対して術前投与したパシレオチドが著効し、結果的には手術が不要になってPrimary Medical Therapyとして有用であった症例を報告したものです。

クッシング病は手術で全摘できない場合、その後の薬物療法でも難渋することが少なくありません。このように全例で著効するとは限りませんが、術前投与、Primary Medical Therapyとしてのパシレオチドの使い方に対する重要な示唆になると思います。

2023.10.17

Web講演会のお知らせです。

10月24日(火)に第8回お茶の水内分泌代謝セミナーが開催されます。Web参加も可能ですので、奮ってご聴講下さい。

高橋教授の「新たな疾患概念 傍腫瘍自己免疫性下垂体炎の樹立と学問体系Onco-Immuno-Endocrinologyの提唱」についての講演だけではなく、興味深い症例や「副甲状腺機能亢進症〜手術ができないときの次の一手〜」についての東大、槙田先生の講演もあります。詳細はホームページに記載しています。どうぞお気軽にご参加ください。

2023.10.03

 榑松先生がJCEM Case Reports 出版した論文 “Adrenal Crisis Associated With COVID-19 Vaccination in Patients With Adrenal Insufficiency” が今週のFeatured articleに選ばれました。おめでとうございます。

本論文では副腎不全の患者さんにコロナワクチンを投与した場合に、発熱や食思不振を呈した場合にはクリーゼのリスクがあることを報告したものです。基本的にはワクチン接種後に発熱や食思不振を呈した場合には3倍以上のヒドロコーチゾンの服用を推奨しています。またアデノウイルスベクターの場合には1回目から、mRNAワクチンの場合には2回目にリスクがあります。9月からコロナワクチンが始まっていますので、副腎不全の患者さんを診療されている先生方にご参考になりましたら幸いです。

Featured article期間は無料でダウンロードできるようです。https://academic.oup.com/jcemcr

2023.09.11

99日第6回やまと内分泌代謝同好会がWeb形式で行われ多数の先生方のご参加のもと活発なディスカッションが行われました。

一般演題では奈良県総合医療センターで、本会の世話人の一人でもある上嶋先生のもと研修中の出口泰地先生が、下垂体膿瘍が疑われた興味深い症例についての発表がありました。また今回公募の一般演題として総合内科で見逃された軽度の副甲状腺機能亢進症の症例のご発表がありました。本会では一般演題も30分の時間をとって非常に濃厚なディスカッションが行われるのが特徴で、そのディスカッションだけでも耳学問として勉強になります。出口先生は落ち着いてよくまとまった発表をされ成長ぶりが伺えました。また多くの先生方の一般演題のご応募も歓迎しております。

特別講演では、獨協医科大学埼玉医療センター 糖尿病内分泌・血液内科主任教授の橋本貢士先生に「明日からすぐに役に立つ甲状腺診療のクリニカルパールと最新の話題」についてご講演頂きました。

1時間の講演時間があっという間で、バセドウ病のガイドラインのアップデート、橋本先生が見つけられた難治性バセドウ病のマーカー、新しい薬剤、そしてアミオダロン誘導性甲状腺中毒症などについて、非常にわかりやすいお話で、目から鱗の話もありました。特に奈良医大でもアミオダロン誘導性甲状腺中毒症で非常に難渋している患者さんを診療していましたので、大変参考になりました。ディスカッションも時間を超えて盛り上がり、その後は世話人の先生方とともの慰労会も大変盛り上がりました。

2023.09.05

当科では来年度専攻医、大学院生絶賛募集中です。

すでに希望を表明して頂いている先生も複数おられるため、応募多数の場合には来年度の大学での研修が難しくなる可能性もありますので当科を希望される先生はお早めにご相談ください。一時的な国内(臨床、研究)留学、研修についてもご相談に乗ります。

 

ご連絡は当科のメールまでお願いいたします。dm840@naramed-u.ac.jp

 

奈良県立医科大学附属病院の専門医登録スケジュールが下記のように発表されました。

一次募集で満員になった場合には二次募集をしない場合もあります。

【一次募集】

11/1(水)正午~11/14(火)

⇒この期間中に、研修医は機構システムから申し込むことになります。

【一次募集採用調整期間】

11/16(木)~11/24(金)

⇒基本的に、この期間内に面接等選考が実施されます。

【一次募集結果発表】

11/29(水)

【二次募集】

12/1(金)~12/14(木)

【二次募集採用調整期間】

12/15(金)~12/22(金)

【二次募集結果発表】

12/25(月)

2023.08.28

高橋教授の総説「Nonalcoholic fatty liver disease and adult growth hormone deficiency: An under-recognized association?」がBest Practice & Research Clinical Endocrinology & Metabolismに出版されました。

高橋教授が2006年にGastroenterologyに成人GH分泌不全症にNASHを合併した1例においてGH補充療法が劇的な効果を示した症例報告は成人GH分泌不全症とNAFLD/NASHの関連を初めて明確に示した報告として注目されています。その後高橋教授のグループは、成人GH分泌不全症77例と年齢、性別、BMIをマッチさせたコントロールと比較して、明らかにNAFLD/NASHのリスクが高いこと、症例によっては肝硬変まで進展しうることを示して来ました。そして動物実験等でGH/IGF-Iが肝臓における脂肪沈着だけではなく、炎症、線維化を制御していることを見出しました。特にIGF-Iが肝星細胞機能の細胞老化を介して線維化を抑制するという新たな機序についても報告しました。その流れに沿って成人GH分泌不全症とNAFLD/NASHの関連については、世界中特にアジアからたくさんの論文が報告され、小児でも肝硬変、肝不全に進展する例などがあることもわかってきました。

成人GH分泌不全症に加えて、一般的なNAFLDのリスクとなる肥満、糖尿病や下垂体機能低下症に合併しうる視床下部症候群などがあるとNASHは急速に進行します。それらを踏まえて高橋教授は多くの先生方とともに班会議や学会と連携して、以前は糖尿病禁忌であったGH製剤の問題について取り組み厚労省と交渉し最終的に禁忌が解除され、今では糖尿病合併の患者さんでもGHは慎重投与することができるようになりました。また成人GH分泌不全症の診断と治療のガイドラインでも、脂肪肝(NASH/肝硬変)の合併に注意が必要であることが記載されています。

今回のこの総説はこれらの流れとともに、最新の知見を紹介しています。下記のリンクは無料でPDFがダウンロードできる期間もありますので(出版社からホームページやFBでの公開についても許可されています)、ご興味のある先生はご覧ください。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1521690X23000908?dgcid=author

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