内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブックが発売されました。
高橋教授が金藤教授とともに編集長を務め、内分泌学会と糖尿病学会が初めて一緒にガイドブックを作成したものです。これから内分泌代謝・糖尿病内科領域を学ぶ若い先生たちだけではなく、指導医の先生にも役立つ内容になっています。
作成にあたり、内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医のカリキュラムを網羅するとともに、実践に必要な知識だけではなくその考え方を学べるようにしました。例えばガイドラインに合わないときの考え方という項目や内分泌代謝疾患エマージェンシーとして、DKAやHHS、副腎クリーゼ、高Ca血症などの実践的な対応をまとめたチャプターもあります。またコラムとして最新の情報やトピックス、トリビアを入れて楽しく知識を増やすことができます。
この場をお借りして編集委員、執筆、査読をして頂いた先生方に心から感謝申し上げます。
516ページ、税込9240円とお手頃になっております。糖尿病学会年次学術集会、内分泌学会総会で絶賛発売予定です。
高橋教授の総説 Paraneoplastic autoimmune hypophysitis: a novel form of paraneoplastic endocrine syndromeがEndocrine J で公開されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/advpub/0/advpub_EJ23-0050/_article/-char/en
Paraneoplastic autoimmune hypophysitis傍腫瘍自己免疫性下垂体炎は高橋教授が多くのメンバーたちと共に主に神戸大学で見出した新たな疾患概念「抗PIT-1下垂体炎」「傍腫瘍症候群としてのACTH単独欠損症」「傍腫瘍症候群としてのPD-1/PDL-1阻害剤関連下垂体炎」の3つの病態を包括的に提唱した疾患概念です。
通常の下垂体炎においては多くの場合、非特異的に前葉あるいは後葉ホルモンが障害されるのに対し、この傍腫瘍自己免疫性下垂体炎では、腫瘍における異所性のホルモン(POMC)あるいは転写因子(PIT-1)発現が起こり、免疫寛容破綻が生じて自己抗体とともに特異的細胞傷害性T細胞が下垂体前葉細胞を傷害するという共通の機序によって発症します。
その結果、「抗PIT-1下垂体炎」ではPIT-1依存性のGH, PRL, TSH分泌低下が、「傍腫瘍症候群としてのACTH単独欠損症」「傍腫瘍症候群としてのPD-1/PDL-1阻害剤関連下垂体炎」ではACTH単独欠損症をきたします。
この新たな疾患概念は国際的にも注目され、2018年国際内分泌学会、2023年欧州内分泌学会のプレナリー演者、マギル大学特別講演演者として招待されています。
現在はさらに症例を集積、発症機序の解明、疾患モデルの作成、ビッグデータによるアプローチを行なっています。
ご参考になりましたら幸いです。
紙谷史夏先生の症例報告論文Combined Hypophysitis and Type 1 Diabetes Mellitus Related to Immune Checkpoint Inhibitors がJ Endocr Soc
に出版されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36694808/
私たちは免疫チェックポイント阻害薬の内分泌irAEである下垂体炎と1型糖尿病の合併例を3例集積し、神戸大学の福岡先生、藤田先生たちと共同で発表しました。これまでの報告と合わせると、ほとんどがPD-1阻害剤によって発症し、中央値24週で下垂体炎が、32週で1型糖尿病が発症していました。いずれも適切な治療を行うと生命に関わるirAEなので注意が必要です。
金沢・奈良 内分泌代謝 Clinical Update Conferenceを開催しました。
12月19日(月)金沢大学大学院 内分泌・代謝学教授の篁敏成先生と意気投合し、コロナ禍を逆手にとって第1回の金沢・奈良 内分泌代謝 Clinical Update ConferenceをWeb開催しました。
下記のプログラムにあるように両講座から最新の臨床研究の発表、そして症例提示ではそれぞれ非常に興味深い演題の発表があり、活発な議論が行われました。いつものメンバーでのカンファレンスも重要ですが、このような交流はお互い大変良い刺激になったのではないかと思います。そしてあまり時間に追われない十分なディスカッションが大切なことを実感しました。今回若い先生たちが積極的に質疑に加わったことも非常に良かったと思います。
若い先生たちは国内外の学会や研究会でどんどん他流試合に挑戦して、大きな視野を持って成長してもらいたいと思います。
篁敏成先生、金沢大学の先生方ありがとうございました。またご支援頂いた製薬会社の方々にも感謝申し上げます。
グローバルのPituitary Master Classが先週ミュンヘンで行われ高橋教授がFacultyとして参加してきました。ミュンヘンの街はクリスマスシーズン真っ盛りで多くの観光客で賑わっていました。
Pituitary Master Classというのは世界の下垂体のエキスパートがFacultyとなり、Facultyのトピックスのレクチャー、次世代を担う若手がユニークな症例をプレゼン、時間をたっぷりとってFacultyがアドバイス、ディスカッションする非常にインターラクティブかつ最先端の情報交換を行うミーティングです。
その他のFacultyにはMelmed, Gadelha, Fleseriu, Strastburger, Ho先生らがおられそれぞれが得意分野のレクチャーを行い、まさに最先端の情報共有とともに活発なディスカッションがなされました。高橋教授は「Novel Form of Hypophysitis: New Kids on the Block」「When is Pituitary Biopsy Necessary?」の2つのレクチャーを行い非常に活発な議論をすることができました。
エキスパートのコメントは共通することも多く、まさに臨床家としてのセンスで重要なものは一緒だと実感するとともに、友人としても交流を楽しむことができました。それにしてもMelmed先生、Ho先生は年齢を感じさせない頭脳明晰ぶりで大変感銘を受けるとともに自分がまだまだ勉強不足であることを感じました。また、時差ぼけで目が覚めて早朝にジムに行くとなんとHo先生が走っておられたのには驚きました。
日本からは3名の若手が参加し大変上手にプレゼン、英語での質疑に取り組んでいました。日本人のプレゼンを見ていると皆必要不可欠な情報をうまく提示しており、日本の学会でのトレーニングがしっかりなされていることを実感しました。彼らにとっても大いに刺激になったようです。
本会は久しぶりに海外での対面の研究会で、長時間の移動はなかなか大変ですが、やはり対面での議論はかけがえのないものであると感じるとともに、また2日間缶詰で寝食をともにしたので、食事の際での交流や情報交換が本当に楽しかったです。そして、日本が世界に遅れないよう若手の先生が積極的に海外での学会などに参加し、最新の情報や考え方を身につけてほしいと痛感しました。
6月にはシカゴでENDOの前にThe Pituitary Congressが開催されます。下垂体領域の世界最新の情報が共有されますし、やはり生で参加すると得るものは大変大きいと思います。下垂体領域に興味のある先生方は是非ご参加ください。
高橋教授が会長を務める第23回日本内分泌学会近畿支部学術集会が2022年11月26日に奈良コンベンションセンターで開催され、盛会のうちに終了いたしました。170名以上の先生方のご参加、40演題の一般演題、22演題のYIA応募があり、対面ならではの質疑もハイレベルで大変盛り上がりました。一般演題の後にフロアで熱い議論やアドバイスの姿も多数ありました。
学会において素晴らしい教育講演、JES We Can等の講演を行って頂いた講師の先生方、座長、YIA審査委員の労をお取りくださった先生方、演題発表をして頂いた先生方、そしてご聴講の先生方、スポンサーとしてご支援頂いた製薬会社の皆様に心より御礼を申し上げます。
そして当科の3年目の河邉良枝先生が「妊娠高血圧を契機に診断、保存的加療を選択した多血症合併多発性パラガングリオーマの一例」の発表で優秀演題賞を受賞しました。前日までスライドを練り上げ、数えきれないくらいのリハーサルをして臨んだ発表は素晴らしいものでした。おめでとうございます!
学会は手作りの部分が多く事務局の岡田定規講師には本当に尽力して頂きました。そして運営を支援してくれた講座のメンバーに心から感謝いたします。
会場も素晴らしく、内容についても多くの先生からご評価を頂きました。今回学会にご参加頂いた先生方にとって、テーマに掲げたように「内分泌代謝疾患診療を楽しめる」ようになるあるいは新たな交流のきっかけになったり、何か新しい気づきを得て頂ければ大変幸いです。微力ではありますが、今後も近畿地方から内分泌代謝学を盛り上げていく所存です。
学会に対するご意見、ご感想などございましたら是非フィードバックを頂けましたら幸いです。
2022年11月11日−12日に東京、京王プラザホテルで行われた第32回臨床内分泌代謝Updateに参加してきました。当科からも以下の多くのメンバーが発表を行いました。いずれも日常診療のクリニカルクエスチョンを掘り下げた演題で準備のプロセスでも多くの学びがあったと思います。一般演題はオンディマンドですので、是非コメント、ご質問等頂けましたら幸いです。
榑松由佳子先生「COVID-19感染後に長期間ステロイド増量を要した中枢性副腎不全例」、紙谷史夏先生「低用量ピルによるCushing症候群と考えられた一例」小泉実幸先生「CYP17阻害剤でサルコペニアが悪化した高齢糖尿病患者の1例」中上純子先生「肝細胞癌腎癌合併例にICI投与後発症した原発性副腎不全の一例」玉城由子先生「パシレオチドが著効した大型下垂体腺腫によるCushing病の1例」、松本直也先生「急性膵炎,DICを契機に両側副腎梗塞をきたした1例」を一般演題で発表しました。
さらに現在CiRAにいる蟹江慶太郎先生が神戸大学時代の成果をさらに発展させてMTE「免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎の新たな病態」を発表しました。
今回はハイブリッドでいずれもオンディマンドですが、ちょっとした交流やポスター前や会場でのディスカッションは大きな意味があるので、早く伸び伸びと対面で参加できるようになってほしいと思います。
また高橋教授は最近のトピックスである下垂体腺腫名称変更問題を取り上げたシンポジウムで「PitNET:内科の立場から」の講演と、岡本会長の特別企画「無症候性内分泌代謝疾患:diseaseの診断閾値はどこにあるか?」にシンポジウムで「下垂体・副腎疾患:クッシング病、サブクリニカルクッシング症候群を考える」の講演を行いました。いずれも大きな反響があり、ディスカッションも盛り上がりました。特にホルモンの自律性分泌、過剰分泌の違い、サブクリニカルの閾値の考え方については、ガイドラインを鵜呑みにせずに病態を考えることの重要性についてお伝えできたのではないかと思います。このようなディスカッションはやはり対面学会の強みでお聞き頂いた先生方からも多くのコメントを頂きやり甲斐がありました。また学会で多くの先生方とお会いできるのを楽しみにしております。
奈良県立医科大学内科では、一般診療に役立つコンテンツを動画で公開しています。
当科では高橋教授の「副腎不全診断治療のパールとピットフォール」をご覧頂けます。副腎不全患者さんを診察する場合に役立つ知識や診療のコツをわかりやすく解説しています。
また専門以外の内科領域でも総合内科専門医のための知識の確認やプライマリケアに役立つ動画が満載です。どうぞご覧ください。
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